歯肉の健康:診断
壊死性歯周疾患
歯周疾患の臨床的徴候を早期に発見することが、その進行を変化させる鍵です1
問診
患者さんの歯肉の健康プロファイルを評価するには、まず、患者さんが診察室に入ってきたところから始めなければなりません – これは、お口の健康管理の既往と共に、このプロセスの重要な部分です。最初は、先入観の無い答えを得るため、自由回答のできる質問をすることをお勧めします。次に、患者さんの症状についての具体的な質問に移ります2。
イギリス歯周病学会の推奨する質問:2
- 歯磨きの時や寝ている間に歯肉から出血しますか?
- ぐらついている歯はありませんか?
- 好きな物が何でも咬めますか?
- 嫌な味や口臭はありますか?
- 痛みや腫れ、歯肉にできものや水ぶくれはありませんか?
- 煙草を吸いますか?
- 他に話しておきたいことがありますか?
歯周基本検査による歯周疾患のスクリーニング
歯周基本検査(BPE)は、歯周組織の臨床的なニーズを確認する簡便なスクリーニングツールです。BPEは、1986年にイギリス歯周病学会が初めて開発し、最近では、2016年に改訂されました2,3。
- BPEでは歯列を6つのセクション「1/6顎」に分けます2,3
- それぞれの1/6顎の中の全ての歯を診査し、コードを用いて採点し、記入します2,3
- 直径0.5mmの「ボールポイント」が先端についたWHO 621プローブを使って診査します 2,3
BPE採点コード3
BPEコード0
プロービング後に出血なし3.5 mmを超えるポケット無し歯石/オーバーハング無し黒ラインが完全に見える
BPEコード1
プロービング後に出血3.5 mmを超えるポケット無し歯石/オーバーハング無し黒ラインが完全に見える
BPEコード2
プロービング後に出血3.5 mmを超えるポケット無し歯肉縁上または歯肉縁下の歯石黒ラインが完全に見える
BPEコード3
3.5 mmから5.5 mmまでのポケット歯肉縁上まはた歯肉縁下の歯石黒ラインが一部分見える
BPEコード4
5.5 mmを超えるポケット黒ラインが完全にポケット内にある
BPEコード*
根分岐部病変分岐部が認められる場合、その数と*の両方を記録してください。
BPE採点コードの解釈2
イギリス歯周病学会は、BPEスコアの解釈について以下のような指針を提示しています:2
BPEコード | 指針 | 歯周再検査 | 歯周再検査 |
0 | 歯周治療は不要 | 指示無し | 次回の検診時の再度BPEを実施 |
1 | 口腔衛生指導(OHI) | プラークと出血チャート | 次回の検診時の再度BPEを実施 |
2 | コード1では、さらに、歯肉縁上と歯肉縁下の歯石等、プラ―ク蓄積因子を取り除く | プラークと出血チャート | 次回の検診時の再度BPEを実施 |
3 | コード2では、必要に応じて、根面デブライドメント(RSD)を実施 |
|
初期治療後にスコアが3の1/6顎について歯周チャート記録 |
4 | OHI, RSD。より複雑な治療の必要性について検討;専門医への照会が望ましい場合も |
|
治療前後に完全な歯周チャート記録 |
* | BPEコード(0–4)に従い治療。より複雑な治療の必要性について検討;専門医への照会が望ましい場合も |
|
治療前後に完全な歯周チャート記録 |
歯周チャート
BPEコードが3、4で*詳細な歯周チャート記録が必要な患者さん。少なくとも、4 mm以上でプロービング時に出血を認める全ての部位で、プロービング深さを(退縮、動揺、分岐部病変と共に)6点法ポケットチャートに記録してください2。
イギリス歯周病学会の医療者の適正歯周病学指針(The Good Practitioner's Guide to Periodontology)で詳細な歯周チャートについて詳しくご覧ください。
詳細な歯周チャート
X線写真は、歯周の評価と診断に欠かせないツールであり、特定の歯の予後の診断に役立つ場合があります。患歯の形態と歯槽骨の喪失の範囲を確認することも、歯周炎に罹患した患者さんの長期的な管理に重要です2。
放射線被爆について以下が求められます:2
- 患者さんの個別の症状に基づき考慮すること
- 臨床的に正当化されること
- 患者さんに明らかな利益をもたらす適切な量であること
咬翼法では、X線写真で歯根膜の特徴が分かります2。
イギリス歯周病学会の医療者の適正歯周病学指針(The Good Practitioner's Guide to Periodontology)でX線写真について詳しくご覧ください。